お別れ

  あらいみえこ 「手を合わせる」

悲しいお知らせがあります。
お世話になっていた木彫り作家のあらいみえこさんが先月お亡くなりになりました。 生前、亡くなった後に投函するようにご家族に託された、最後のお手紙が届きました。 一昨年の暮れから闘病生活に入られて、わずか一年と少しでお別れの日が来てしまいました。
あらいさんの作る愛らしい人形たちは、たくさんの方の心に触れて、愛されてきました。 「てるてる坊主」や「さくらの花雛」を、いつまででも待ちますと言ってくださったお客様にお届けすることができなくなり、本当に残念です。 今思えば、昨年の秋に制作を再開し納品してくださった時には、ご自分の残された時間をご存知で、いつも通りに手を動かしてくださったのです。
20年余り人形を作られたあらいさんと、百草の庭が関わったのはわずか2年間のことでしたが、私に宛てて、御礼の言葉と 「少し短かったかもしれませんが、とても幸せな人生でした」と、そう書き残してくださったことに、本当に感謝しています。 あらいさんはパソコンを持たない方だったので、いつもお電話かお葉書でのやりとりでした。 お元気だった頃の、いつでも明るく優しかった電話口の声が今も耳に残っています。
あらいさんのお手紙は、こう結ばれていました。 「これからの私は、もしもあの歌のように風になれるならば、老後の楽しみにとっておいた小笠原諸島、屋久島、それからバオバブの木に逢いにアフリカまでも行ってみたいなぁと考えています。 それではまた、いつの日にか。」
今頃は海を渡っているかなぁ。 このお手紙のお蔭で、そんな風に思うことができます。 あらいさん、ありがとうございました。 もう作品を手に取ることはできないけれど、あらいさんの作る白いシナの木の清らかな人形たちの姿を決して忘れません。

下田 裕美

Category: 木工 | Tag:

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